茶室「五庵」

昨年の東京オリンピックに合わせて開催された「パビリオン・トウキョウ2021」で、9つのパビリオンが都内につくられたことをご存じでしたか?あまり宣伝などしていなかった為、知らなかった方も多いのではないでしょうか。

残念ながら、全てのパビリオンはオリンピック終了とともに撤去・廃棄することを基本としていたため、現在は都内で見ることはできませんが、その中の作品の1つ、建築家の藤森照信氏の茶室「五庵」をご紹介させて頂きます。

東京都江戸東京博物館長でもある藤森氏は、屋根に草や木を植えたり、自然素材を生かした作品の多い日本を代表する建築家です。私の実家の近所に、藤森氏が建築した 作家の赤瀬川原平氏の自宅「ニラの家」があり、『とても素敵なおウチだな。こんな家に住みたいな。』と、通るたびに思いながら通学、通勤しておりました。

そんな懐かしさからか、たまたま通りかかった新国立競技場の横に建っていた「五庵」を見つけた時に、『もしかしたら藤森氏の作品?』と思い調べて「パビリオン・トウキョウ2021」について知ることになりました。

「五庵」は、緑の芝と杉材を焼いた黒い壁、ボンボンの付いた帽子をかぶったような屋根、現代的な新しさと歴史的な古さが融合した素敵な茶室です。

建物に入り、梯子で2階へと上がると茶室があります。梯子は「にじり口」を表し、暗くて狭い場所を通り、茶室という別世界に移動させる機能を持っており、大きな窓からは新国立競技場が見えたそうです。

その後、藤森氏が廃材の一部を引き取り長野県茅野市にある藤森氏の生家の畑(「高過庵」「空飛ぶ泥舟」「低過庵」が立ち並ぶ場所)に再制作されるそうです。生まれ変わった「五庵」の窓からは、どんな景色が見えるのでしょうか?再び見れる日を楽しみにしております。

徳原